長い年月をかけて現代まで大切に受け継がれてきたうつわですが、フランスからの旅の途中で怪我をしてしまいました。日本の修繕技法「金継ぎ」で蘇らせ、また大切にしてくださる方にお譲りできればと思います。金継ぎとは、漆(木の樹脂)で破損箇所をつなぎ仕上げに金で装飾した室町時代頃から伝わるうつわの修復技法です。傷痕を隠すのではなく魅せるものと捉える日本の美意識が生み出した技術といえます。こちらは1790年創業、フランスSARREGUEMINES(サルグミンヌ)窯の花リムスープ皿です。割れやひびを金継ぎで修繕いたしました。⁡サルグミンヌ窯の中でもこちらの花形リムのシリーズは大変人気があり年代で色味や刻印も違い、コレクターも多いデザインです。この子はおそらく1920〜1950年代のお品。元々の持ち主様はひびが入ったまま長い間大切に使われていたそうです。お譲りいただく際、輸送中に割れてしまいました。ここまでよく耐えて頑張りました。割れた状態で私のもとに辿り着いたのも運命だと思い、またご縁を繋ぐべく丁寧に修繕いたしました。⁡花リムが可愛らしい印象のうつわが、存在感のある継ぎ跡が煌めき、洗練されたモダンなデザインに生まれ変わりました。動画でご覧いただけます少し深さのある形状なので、パスタや煮込みハンバーグなど、ソースがあるお料理にぴったり。フルーツたっぷりの色鮮やかなスイーツを盛り付けるのも金継ぎとのコントラストが綺麗でおすすめです。漆(木の樹脂)で割れた部分を接着し細かな隙間を漆のパテで埋めその上を極細の筆で漆を何度も重ねてはやすって線を滑らかにし、仕上げに本金を撒いて磨き上げました。修繕には、漆の硬化の時間も含め3ヶ月程かかりました。修繕中のつぶやき❶修繕中のつぶやき❷現代では、合成樹脂と合成塗料を使用した「簡易金継ぎ」などと呼ばれる技法がありますが、鉛が微量に含まれている為安全性が低く、口に触れる食器に使う修繕技法としてはあまりおすすめできません。こちらの金継ぎは、本漆・本金・自然素材のみを使用し口に触れても安全な伝統的技法「本漆金継ぎ」で修繕しているため、安心してお使いいただけます。⁡本金で仕上げた継ぎ跡は銀や真鍮で仕上げたものより経年変化が少ないので長く煌めくラインをお楽しみいただけます。⁡取り扱いは基本的に漆器と同じです。うつわを使用したあとは柔らかいスポンジに中性洗剤を付けて優しく洗い、しっかり乾かしてあげてください。⁡継ぎ跡は擦れに弱いので、ナイフ・フォークで擦ると削れてしまうこともあります。当たらないようにするか、木製のカトラリーを使用するのがおすすめです。⁡食器同士を重ねることによって擦れることもあるので重ねるときは紙や布を間に挟むと良いです。⁡慣れてきたら扱いは簡単です。少しだけ意識して長く可愛がっていただけたら嬉しいです。⁡⁡⁡⁡⁡⁡⁡⁡たくさん旅をして長い年月を経たうつわ。手に取るたびに様々な表情を見せてくれるその子にまるで自分が100年大切にしてきたような愛着が生まれます。⁡『巡り巡る』で修繕したうつわたちがこれからも暮らしの道具としてたくさんの人の想いをのせて受け継がれていくことを願っております。⁡⁡⁡［ SARREGUEMINES ］1790年にフランスの町サルグミンヌで開窯したサルグミンヌ。ナポレオンも愛したといわれるその品質の素晴らしさで現在もアンティークファンに愛されているブランドです。⁡brand/SARREGUEMINESage/1920〜1950年代